法定養育費制度
1 はじめに
現在、国は、家族法制の見直しを行っています。その一つが、急速に議論が進んでいる共同親権です。それと同時に、養育費についても議論が始まっています。養育費支払いの現状と、新しい制度として検討されている法定養育費制度等について、以下でご説明します。
2 養育費支払いの現状
子供がいる夫婦が離婚する際、子供の養育費の金額等が問題となることがあります。国の調査(令和3年度)によると、養育費の取り決めをしている母子家庭世帯の母が46.7%で、父子家庭世帯の父は、28.3%となっており、そもそも子供がいる離婚した夫婦の多くは、養育費の取り決めをしていないという状況です。
そして、養育費の取り決めをしたとしても、それが確実に履行されるとは限らず、離婚した父親からの養育費の受給状況は、「現在も受けている」が 28.1 %、離婚した母親からの養育費の受給状況は、「現在も受けている」が 8.7 %となっています。
このように、子供のための養育費の支払いが十分になされているとは言えない状況にあります。
3 養育費の確保に向けて
子供の監護に欠かせない養育費の確実な確保に向けて、法制審議会家族法制部会では、⑴法定養育費制度の創設と⑵養育費についての先取特権の付与を検討しています。
法定養育費制度について
法定養育費制度とは、父母が子の監護に要する費用の分担についての定めをすることなく協議離婚をした場合に、父母の一方であって離婚の時から引き続き子の監護を主として行う者が、他の一方に対して、政省令(国が定めたルール)により算出した金額の養育費の支払いを求めることができる制度です。法定養育費制度案では、養育費の金額は、扶養を受けるべき子どもの最低限度の生活の維持に要する標準的な費用の額その他の事情を勘案して子の数に応じて、政省令により算定することとなっています。
この制度によれば、養育費についての取り決めをしなかったとしても、国が定めた基準の金額を養育費として請求することができるようになります。
先取特権の付与について
養育費を実効的に確保するために、民法306条を改正し、養育費の請求権に一般の先取特権を付与し、その順位を雇用関係の先取特権に次ぐ2番目とすることが検討されています。
養育費の請求権に先取特権を付与されることで、優先的に養育費を回収することができるようになるので、養育費確保の実効性が高まるとされています。
4 最後に
現在、家族法制の見直しが続いており、新しい法制度なども続々と検討されています。
共同親権や法定養育費制度など、子の福祉に根差した法制度の行方を注視していく必要があるでしょう。