経営者の離婚

経営者の離婚

 

tie-690084.jpg 最近、経営者の離婚案件が増加しています。
経営者の離婚の場合、財産関係が複雑になることが多く、かつ、分与される金額も高額となることからすると、弁護士などの専門家に依頼をすることで、適切な金銭給付の額を決定することが不可欠といえます。経営者と言っても、さまざま類型に分類をすることができます。

自営業者の場合や会社経営の場合もあります。あるいは開業医などの場合も経営者に分類をすることができると思います。いずれの類型に分類をするかで、財産給付の基準なども異なっていることもあります。
以下では、経営者の特有の問題について、整理をしてみます。

 

 婚姻費用分担金・養育費について

まずは、婚姻費用分担金・養育費についてです。
経営者の離婚の場合、婚姻費用分担金や養育費の金額を定める際に金額の基準が異なることがあります。

婚姻費用・養育費算定表というものがあります。
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf
算定表の年収の基準を見ると、給与所得者と自営業者の場合には、基準が異なっていることがわかります。例えば、給与所得者の年収が1000万円の場合、自営業者の所得は710万円に相当するとされています。
どうしてこのような差が生まれるのでしょうか。
算定表上、給与所得者の年収は税込み年収となり、控除は一切されていない金額となります。他方で、自営業者の場合は、所得金額で、経費が控除された後の金額ということになります。そのため、給与所得者と自営業者の基準が異なることになるのです。
経営者の離婚の場合、婚姻費用や養育費を算定する上で、自営業として、所得が判断されることがあるので注意をする必要があります。
もっとも、経営者といっても、会社の取締役である場合、厚生年金に加入をしていたり、健康保険に加入をしていたりすることがあるので、この場合には、給与所得者として判断をされることがあります。
 

慰謝料について

次は、慰謝料についてです。
経営者であることを理由として、慰謝料の金額に影響を及ぼすことはあるのでしょうか。
慰謝料とは、相手方が被った精神的苦痛に対する金銭賠償です。
そうすると、基本的には本人がどのような職業なのかについては、慰謝料の金額に影響を及ぼすとは思えません。もっとも、慰謝料の金額を算定する際には、相手の支払い能力なども一切考慮されないとは言い切れません。例えば、同じ100万円を払うにしても、年収200万円の人の場合と年収3000万円の人では、支払う際に痛みが全く異なってくると思います。そのように考えると、理屈の面はともかくとして、全く考慮されないと言い切れないと思います。
もっとも、あとで説明をするように財産分与の金額を算定する際には、お互いの資産などの一切の事情を考慮して、金額が定められることがあるので、財産分与での考慮金額の方を気にかけた方がいいと思います。
 

  財産分与について

次は、財産分与の問題です。
 
財産分与は、おそらく、もっとも経営者に特有な問題が発生する領域といえます。
財産分与ですが、通常は共有財産を半分にするという2分の1ルールというのが実務では基本的に確立しています。
ところが、経営者の場合には、この2分の1ルールが妥当しない可能性があるのです。
例えば、医師、開業医のケースを考えてみましょう。
医師の免許を取得するには、医学部を卒業し、医師国家試験に合格しなければなりません。その間には、本人の並々ならぬ努力があると思います。そして、晴れて医師になったとしても、そもそもその資格自体本人の努力で取得したものですし、医師としての業績についても、本人の能力におうところが大きいと言えます。
2分の1ルールについては、夫の所得形成について、妻が寄与しているという点が評価されて、妻にも所得を分配するべしという考えが根底にありますが、以上のように、本人の能力の割合が高いと言える場合には、妻の寄与の割合も低くなります。
経営者の場合には、2分の1ルールが当然に妥当するわけではありませんので、分与するべき財産が高額となる場合には、争う余地が出てくると思います。
 
 
また、経営者の財産分与の場合、財産の額も高額化する傾向がありますが、財産の種類も、不動産、株、保険、自動車と多岐に及ぶことが多いため、共有財産の対象となる共有財産の範囲を明確にするためにも、財産目録を正確に作成する必要があります。この作業を正確に行わないと、後々に財産の範囲で問題となったりと、トラブルとなる可能性がありますので、専門家に依頼をすることで、財産目録の作成に着手するべきといえます。
 
 
さらに、注意が必要なこととして、扶養的財産分与という考えを整理しておく必要があります。扶養的財産分与とは、夫婦間の財産分与に、扶養的な意味合いを持たせて、つまり、今後の一方配偶者の生活を考慮して、財産的給付を認める考え方です。
夫婦の共有財産を2分の1にするというのが清算的な財産分与であるとすれば、離婚後のお互いの生活状況を考慮して、財産の額を決定するのを扶養的財産分与といいます。
経営者の離婚の場合、離婚格差が生じる可能性が高いといます。夫は高収入だが、妻はスキルもとくになく、無収入というケースはそれなりにあると思います。この場合、離婚をすれば、妻は生活の糧がなくなるわけですから、離婚後は、生活に格差が発生してしまいます。このような事態を防止するために、離婚時に、一定の財産的給付が認められる可能性が、経営者離婚の場合にはあると思います。
 
 
 

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