熟年離婚
最近、熟年離婚の相談、依頼が増加しています。
「子供が成人し、夫が会社を退職、夫婦二人でいる時間が増え、お互いの嫌なところが目につくようになった。」
「死ぬまで夫の面倒を見たくない。」
「子供のために今まで離婚をしなかったが、子供が自立した以上、もう一緒に住めない」
「長年夫の浮気を我慢してきたが、もう限界にきた」
など、理由は様々だと思います。
離婚については、年代ごとに抱えている問題が異なります。
その代わり、長い間一緒にいたことから、それなりに財産が形成されていることがほとんどです。そのため、金銭給付の問題がほとんどと言えます。つまり、熟年夫婦については、ほぼお金の問題ということです。
まずは、慰謝料です。
長い間夫に女性問題があったが(女性問題に限らず長年我慢をしてきた問題)、子供のこともあり、離婚はしなかった。けれど、子供は自立した以上、我慢をする理由はない、ということで、離婚に踏み切るケースは多いです。
熟年離婚の場合、慰謝料請求の証拠化が難しいというケースが多いように思います。例えば、20年も前の夫の不倫があったとしますが、この時の証拠が残っていることはまれといえますし、不法行為責任については、時効の問題もあります。
今も不倫をしていて証拠があるというようなケースは比較的立証をしやすいといえます。しかし、20年も30年も継続して夫が不倫をしていると言うことを立証するのは相当困難が伴うと言えます。そのため、熟年離婚では、高額の慰謝料を払ってもらうというよりも、財産分与で、それなりの財産的給付をもとめるほうが効率的と言えます。
次は、メインの財産分与です。
財産分与には2分の1ルールがありますから、分与額はそれなりの金額になります。
預金、現金、保険(解約返戻金を基準にします。)、固有財産を除きますが(とはいえ、熟年離婚の場合ほとんどが共有財産になります。)、基本的には半分を分与しなければなりません。
高額の分与対象になるお金として、退職金があります。退職金は、2000万、3000万円クラスの金額になることが多く、是非とも財産分与に加えたいところです。実務では、退職金も財産分与の対象になるとする見解が支配的ですが、注意が必要なのは、退職金は、退職時に支給されるものです。そのため、退職前に分与をしようとしても、退職金を受給できるのは、夫が退職した後になります。
そして、さらに問題を難しくしているのが、退職金はかならずもらえるという保証がないのです。景気悪化によって、退職金カット、または極端な例ですが、夫が退職前に懲戒解雇されれば、退職金がもらえなくなってしまう可能性があります。退職金を財産分与の金額に加える場合には、退職金がもらえるある程度の蓋然性が認められなければなりません。
退職前の場合は、退職証明(見込み額の記載のあるもの)を会社から出してもらい、計算をすることが多いです。ただ、実際に、退職前に退職金の半分に相当する金額を準備することができるケースはそう多くはありません。
そのため、退職前に離婚をする場合には、支払いを退職時以降にしておくのか、あるいは離婚をするのを退職後まで待っておくのが賢明と言えます。
その他、不動産が存在していることが多いです。
熟年離婚の場合は、住宅ローンは完済をしていることが多いです。
この場合は、離婚後はどちらが住宅を取得するのかという問題が出てきます。
居住関係の確保という問題は熟年離婚の問題でとても重要なことですから、慎重に決めるべき事柄と言えます。もっとも、住宅を取得した場合には、それなりの価値のあるものを取得することになりますから、取得できる現金が減ることは理解する必要があります。
最後に、忘れてならないのが、年金分割です。
熟年離婚の場合、年金の支払額も相当な金額になることが多いと言えますから、年金分割は必ず行っておく必要があります。年金分割もほとんどのケースで、按分割合は、0.5とされています。