妊娠中の妻へのモラハラ発言

1 はじめに

「モラルハラスメント」という言葉はすでに聞きなじみのある言葉ですが、離婚事件の分野でも「夫婦間のモラルハラスメント」に苦しみ、弁護士に依頼されるクライアントも少なくありません。

モラルハラスメントという性質上、発言を受けた方は心に深刻な傷を負ってしまうが、発言をした側からすれば気に留めないため、軽く流されてしまいがちです。また夫婦間という「密室のやり取り」ですから、相談をしても第三者からなかなか理解を得づらいといえます。実際の離婚事件でも、モラルハラスメントが問題となるケースがありますが、証拠が乏しいために各ハラスメント発言を認定することができず、慰謝料請求が困難となりやすいという側面も否めません。

2 妊娠中の妻への発言がモラハラ行為にあたるとされた裁判例

しかし、モラルハラスメントを理由する慰謝料請求が認められないわけではありません。

妻に対する言動がモラルハラスメントに該当し、違法性を有するとして、慰謝料を認めた裁判例があります(東京地方裁判所令和元年9月10日判決)。

この裁判例では、モラルハラスメントの慰謝料が200万円であると判断されました。

裁判所は、配偶者(妻)に対する約4か月間の言動を認定しました。以下では、その一部を紹介します。

①妊娠中の妻に対し、「自宅に物が多すぎる」「別居したい」「妊娠で辛い時があるのはわかるけど、辛くないときにやることやってもらえないですか」と不満を告げる。

②妻の職場トラブルに関し、「弁護士に相談に行く、証拠を残せ」と指示し、トラブルの会話を録音しなかった妻に対し、「証拠が大切といってる」「いうこと聞けないならもう助けられない」「バカなんですか?」「何が必要かほんとわかっていない人だね」「勝手にしろよほんと」とメッセージを送る。

③日常会話の中で、すぐに「好きにしろ」「勝手にしろ」「別居する」等、突き放すような言葉を発する。

④妻の食事態様について、飲食店内で「意地汚い」「品がなさすぎる」「バカにどんな話しても通じない」と告げる。

⑤妻が家計の負担について話をしようとすると、「そっちが勝手にこんな高い良い家に住んで、こっちはマンションを手放さないといけないのに、その上さらに援助してっておかしいでしょ、贅沢にもほどがある、そんなんだったら子供なんか作らなきゃいい」「離婚して犬連れて帰れよ」と告げる。

⑥「クズ」「死ね」「離婚して子供もおろせ」「何様なんだよ このクズ野郎」「マジで死んでくれないかな」「親の教育が悪すぎる」「こんな最低な女見たことない」と告げる。

⑦口論の際、妻の発言を遮って自己の主張を大声でたたみかけ、妻が口論をやめようと言っても、1時間以上「妻は常識を知らなすぎる」等と言って議論を続けえう。

⑧部屋を片付けないことを責め、子供を堕胎するよう求め、「いらない。当たり前じゃん。やっていけないよ。あんたみたいなくそ人間と。自分のことしか考えてないんだよ。」「いや、本当に離婚届、明日持ってくるから書いてね。俺は書くから」「勝手に1人で産めよ。勝手に1人で育てろよ。だったら。」と告げる。

⑨約1日に渡り、「人間としておかしい」等と妻を批判するメッセージを送り続ける。

裁判所は一連の夫の言動を、「妻の人格を否定して夫の価値観を押し付け、夫に従わなければ徹底的に罵倒するような暴言を吐くようになり、その頻度や内容もエスカレートし、社会的に許容されるべき範囲を逸脱する」、「これら一連の暴言がいわゆるモラルハラスメント行為に当たり、妻の人格権を侵害する」というように認定しました。

この裁判例のように、受けたモラルハラスメント行為を「いつ、どのような状況で、誰が、どういう発言をしたのか」と具体的に主張していくことが重要となります。また、配偶者とやり取りをしたメッセージや配偶者との会話の録音、親族に相談したメッセージの履歴など、客観的な証拠を多く提出することで、「密室のやりとり」であっても、慰謝料請求が認められることにつながるといえます。また、録音などが難しい場合であっても、日記やスマホのメモ帳などになるべく詳細にメモを残しておくことも有用である場合もあります。

3 最後に

実際に配偶者のモラルハラスメントで苦しんでいらっしゃる方も少なくないと思います。「これはモラハラではないのか?」と思い当たるようであれば、なるべく早期に証拠を確保していくことが重要です。

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