離婚による女性の収入の変化について弁護士がポイントを解説
離婚による女性の収入の変化についてのポイント
離婚は,離婚届を役所に提出すれば終わりではありません。そこから,また日常が始まります。
日常生活には,”お金”が必要です。
婚姻中の夫婦の場合,通常,夫婦の収入の合計で生計を立てていますが、いざ離婚となると,離婚直後は急激に収入と支出のバランスが変化するために貧困に陥りやすくなっています。
それは,専業主婦だけでなく,パートやアルバイトにより家計の足しになる仕事に従事する生活を送っていた人も同様です。
離婚後の収入はどうなるでしょうか?
離婚後の主な収入として (離婚後~老後)
①仕事を探す(正社員・収入アップ)
②財産分与
③養育費(子供がいる場合)
④各種助成金(児童手当,自動扶養手当,医療費助成制度 等)
④年金分割(合意分割,3号分割)
収入のメインとなる仕事をいざ探すとしても,小さい子供がいる場合は,なかなかフルタイムの正社員として働く環境が整っていないのが現状です。時間の融通がききやすいパートタイマー,アルバイトなどの非正規雇用につくことが多くなっています。
2019国民生活基礎調査の概況【厚生労働省】によると,母子世帯の雇用者所得は225.6万円であり,児童のいる世帯の雇用者所得651.8万円と比べて大きく下回っています。
離婚直後に貧困に陥るのは小さい子供がいる女性だけではありません。熟年離婚などでも貧困に陥る可能性があります。それは元々仕事をしていた人もブランクが長すぎると就職希望先から敬遠されてしまうことがあるからです。そうして結局,低収入のパートタイマー等に就職せざるを得なくなり,資産等が無ければ,生活を維持するだけで精一杯な状況に陥ってしまう可能性があります。
離婚後必要なお金は
日々の生活費,子供の教育費,家賃,老後資金 etc.
加えて,離婚で忘れがちなのが,年金や健康保険等の社会保険料の負担です。
主婦だったときは,夫とその会社が扶養である妻の分の社会保険料を支払っている状態でしたが,離婚すると自分で納付しなければなりません。
例えば,国民年金保険料であれば,令和4年度月額16590円になります。
注意しなければならないのは,現在の生活費だけでなく,老後資金も準備する必要があるということです。
年金分割で老後の年金はどれくらい増えるでしょうか?
公的年金は,国民年金と厚生年金の2階建てですが,年金分割により分割できるのは厚生年金部分のみです。その厚生年金のうち婚姻期間中に保険料を払った部分のみが分割対象になります。相手の年金全体の半分もらえるわけではありません。
令和元年度厚生年金保険・国民年金事業の概況【厚生労働省年金局】によると,年金分割を受ける側の年金分割前後の受給額では,平均年金月額差額が約3万円増加して約8.4万円となっています。ちなみに,厚生年金保険(第1号)受給権者の平均年金月額は,令和元年度末現在で老齢年金は約14.4万円です。婚姻期間中ずっと夫に扶養されていた妻は,その期間が長いほど離婚時に年金分割をしても,平均レベルの年金額には届かないケースが多くなります。
弁護士から離婚を検討されている方へのメッセージ
夫の収入が主たる収入で、妻は社会保険料のかからない範囲の収入で働いているという上記のような家庭は今なお少なくないと思います。
上に示したとおり、そのような家庭の妻は、法的に相当な養育費を確保できたとしても離婚後の生活が苦しいものになります(養育費を確保できなければさらにかなり厳しい状況に追い込まれるでしょう。)。経済的に苦しい生活に追い込まれないためには、基本的に仕事を増やす(収入を増やす)しかありません。しかし、収入というものはそう簡単にすぐには増えないものです。
どうしても、収入が増えるまでには時間がかかります。そうすると、それまでの間の不足分を補うために、やはり一定の貯蓄を確保しておいた方がよいといえます。その「貯蓄」を実現するための手段が慰謝料請求や財産分与請求なので、これらを回収できるかどうかはケースバイケースではありますが、必ず検討した方がよいといえるでしょう。
最後に、老後のことを考えると、やはり年金分割も忘れずに行っておきたいところといえます。