「共同親権」導入に向けた現在の動き
1 はじめに
今年に入ってから、急速に動きを見せている「離婚後共同親権」の導入。
令和6年1月30日に、法制審議会の家族法制部会は、「家族法制の見直しの関する要綱案」をまとめました。法務省は、民法等の改正案を、令和6年1月6日に召集された今国会に提出し、成立を目指しています。
2 現在の「離婚後親権」制度
現在、日本の民法では、「協議上の離婚をするときは、その協議で、」又は「裁判上の離婚の場合には、裁判所」が、父母のどちらか一方を親権者と定めなければならないとされています(民法819条1項、2項)。これを「単独親権」といいます。
「単独親権」では、父母の一方だけが親権者となりますので、別居親が子供の養育に関わることが困難であるというデメリットがあると考えられてきました。
3 共同親権についての要綱案
要綱案では、民法819条を見直し、「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める」「裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の双方又は一方を親権者と定める」との規律を設けることとしています。
このような規律ができることで、離婚後の子供の親権について、「共同親権」を選択できるようになります。
一方で、DVや子供への虐待も大きな問題となっており、共同親権になることで同居親や子が危険にさらされる可能性もあります。そのような事態に対応するため、要綱案では、「父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき」「父母の一方が他の一方から暴力等を受けるおそれの有無、協議が整わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき」には、裁判所は、「単独親権」と定めなければならないとされています。
4 最後に
「共同親権」に関する民法改正が今国会で成立するのか、「共同親権」が導入された後の運用がどうなっていくのか、裁判所が適切な判断を下すことができるのかなど、今後も目が離せない重要な議論となりそうです。