60代以降(熟年世代)の離婚について弁護士が解説
60代以降のご夫婦は、お子様も独立され、家のローンも完済し、中にはもう定年後のセカンドライフを過ごされている方も多いのではないでしょうか。
そのような状況での離婚は子供の親権、養育費、ローンの返済、といった20代、30代の若年での離婚で生じやすい問題ではなく、財産分与、年金といった問題がメインとなることが多いです。
・そもそも離婚できる?
「子どもが独立したしもうそろそろ・・・」
こう考えて離婚を考え始めるご夫婦もいらっしゃいます。
通常であれば、離婚届という緑の用紙に必要事項を記入し、判を押し役所に提出する・・・といった、すなわち夫婦のお互いの合意により離婚をすることができます。
ですが、相手が離婚に応じない、といった状況ならどうでしょう。
その場合は調停や裁判での離婚を選択することになります。
もっとも、これら手続を利用すれば100%離婚できるとは限りません。
中でも裁判で離婚が認められるためには、「婚姻を継続しがたい事由」が認められるかどうかが鍵となっています。
詳しくは、「離婚原因」をご覧ください。
・夫婦の財産はどうなるの?(財産分与)
「離婚することができそうだけど、夫婦で蓄えてきた財産はどうなるの?」
「離婚した後どれだけの財産がもらえるの?」
60代以降のご夫婦の方は、婚姻生活が相当期間にわたっており、夫婦生活の中で形成してきた財産も多くあるのではないのでしょうか。
まだあまり夫婦生活の中での財産がない20代30代の若年での離婚では揉めることが少ないのですが、60代以降の離婚では財産が多いことや将来的な収入の先細りが予想されるため、この財産分与が非常に大きな問題となる傾向にあります。
通常であれば夫婦生活の中で形成した財産(「共有財産」といいます。)であれば、基本的には2分の1ずつで分けられることになります。
裏を返せば、お互いが結婚前から所有していた財産や、結婚した後であっても夫婦の一方が相続で取得したような財産など(「特有財産」といいます。)は、この財産分与の対象とならないので注意が必要です。
ではどうやって財産分与が行われることになるのでしょう。
たしかに現金や預貯金は財産分与のイメージが沸きやすいと思います。
それでは婚姻生活中に一緒に買った家、自動車はどうやって分けるのでしょうか。
この場合、通常以下①か②の選択がとられることが多いです。
- 夫婦どちらか一方が取得し、その評価額分の財産(預貯金など)をもう一方が取得する
- 売却してその金銭を分与する
いずれの選択を採用するにせよ、家の評価や車の査定は不可欠となるでしょう。自分の離婚後の生活や家の評価額(あるいは車の査定額)など、いろいろな要素を検討したうえでどのように分けるか、検討されるとよいでしょう。
・年金はどうなるの?(年金分割)
「離婚した後、私の年金受給額はどうなるの?」
60代以降の方となると、年金を受給されている、中には年金で生活されているご夫婦も多いことでしょう。
したがって、離婚後の年金がどうなるかは今後の生活に非常に大きな影響を与える問題といえます。
法律上、離婚の際の年金については「年金分割」という制度があります。
勘違いされやすいのですが、「夫婦の年金受給額を半分に分ける制度」ではなく、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)について、夫婦間で分割するという制度です。(詳しくは「年金分割」をご覧ください。)
ですので、年金分割の請求後は、分割した夫婦の一方は、分割した厚生年金記録を除いた分の年金、分割を受けた一方は、分割を受けた厚生年金記録が加算された分の年金が受給されることになります。
この年金分割ですが、原則として、離婚から2年以上経過した場合には行うことができなくなってしまいます。離婚の際には必ず検討するようにしましょう。