医師の離婚について弁護士が解説

婚姻費用・養育費

夫婦はお互いに扶助義務というものを負っています。この扶助義務とは,夫婦が一体となって衣食住に必要な生活費(婚姻費用)を分担するという形で現れるものです。これは,例え夫婦が離婚を前提に別居することになった場合であっても婚姻関係が継続している間は存続します。

離婚が成立した場合,夫婦関係は終了しますので元配偶者の婚姻費用を支払う義務はなくなります。しかし,元配偶者との間に子が産まれている場合は,夫婦関係が終了しても子との親子関係は継続しますので,養育費を支払う義務は残ります。

この婚姻費用や養育費は,当事者間の話し合いのみで自由に決めることが可能ですが,一般的にはお互いの収入に応じて決めることになります。

一般的に医師の収入は高額になることが考えられ,医師ではない配偶者との収入と大きく開きが生じることが考えられます。そのため,医師が婚姻費用・養育費の支払義務を負う場合,かなり高額な婚姻費用・養育費を負担する可能性があります。

財産分与

財産分与とは,離婚に際して,夫婦の一方が他方に対し,婚姻期間中に形成した財産を分配する制度のことをいいます。

財産分与の対象となる財産は,夫婦が婚姻期間中に協力して得た財産のことであり,実務上は婚姻後に形成された財産であれば名義のいかんにかかわらず財産分与の対象とされています。そのため,婚姻前に形成した財産については,分与の対象財産には含まれません。

上述のとおり,医師の場合は,一般的には高額な収入を得ていると考えられるため,婚姻期間中に形成した財産がごく普通の家庭に比べると高額なものになっているといえます。財産分与の清算割合は原則2分の1とされていますので(「2分の1ルール」といいます。),医師である配偶者から医師ではない配偶者に高額な財産が分与されるというケースも十分にあり得ます。

もっとも,2分の1ルールにも例外があり,配偶者の一方の特別の努力や能力により資産形成がされたといえる場合には,割合が修正されることがあります。医師は専門性の高い職業であり,その専門性の高さが収入の高さに影響を及ぼしているといえることもあるため,医師に有利な修正がなされることも十分にありえます。

修正されるかについては,その事案毎の判断になりますので一概には言えませんが,過去の事案では財産分与の割合を医師6割,医師でない配偶者4割に修正する判断をしたものもあります(大阪高判平成26年3月13日)。

医師が経営者でもある場合

医師が勤務医ではなく開業医として病院や医療法人を経営している場合には,上記の他にも注意することがいくつか考えられます。

例えば,医師ではない配偶者が病院の従業員として勤務している場合や医療法人の役員になっている場合には,離婚後の処遇についても十分に話し合う必要があります。

これらについては,離婚に伴い当然に解消される問題ではありません。例えば従業員である配偶者を,離婚したからと当然に解雇するのは違法な解雇にあたる可能性が高いです。

最後に

医師の離婚の場合,相手が医師となる場合もご自身が医師である場合も同様に一般的な離婚の場合に比べると特殊な問題を多くはらんでいるといえます。

自身の利益を守るためには慎重な準備が必要です。離婚を決意されたら一度ご相談に来られてはいかがでしょうか。

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