こんなことで離婚してもよい?離婚を悩んでいるケースと離婚の手順
年間の離婚件数について
厚生労働省の「令和4年度離婚に関する統計の概況」によると,令和2年の離婚件数は,約19万3000組とのことです。平成15年以降,離婚件数は減少傾向とのことですが,推移のグラフによると,それでも毎年20万組程度の夫婦が離婚をしているという報告結果が出ています。
どのような理由で夫婦は離婚をしているのか?
年間20万組程度の夫婦が離婚しているということですが,一体どのような理由で離婚しているのでしょうか。裁判所が発表している司法統計の「婚姻関係事件数-申立の動機別」の令和2年度の統計結果によると,男女ともに一番多い離婚理由は「性格が合わない」でした。ちなみに,2位以下は男女それぞれ異なっており,男性の場合は「精神的に虐待する」,女性の場合は「生活費を渡さない」でした。興味のある方は誰でも閲覧が可能ですので,裁判所のホームページからご確認ください。
もっとも,この統計は,あくまで家庭裁判所に申し立てられた婚姻関係事件が対象となっておりますので,夫婦間の単なる話し合いで離婚が成立したケース(いわゆる協議離婚)は統計には含まれておりませんので,必ずしも実態を反映しているわけではないことにはご注意ください。
そもそも離婚するのに理由が必要なのか?
そもそも離婚するのに理由が必要なのでしょうか?結論からすると,夫婦がお互いに離婚することを合意すれば,理由がなくても,またはどんな理由であっても離婚することは可能です。これは一般的には協議離婚と言われます。
協議離婚の主な流れは,「①離婚の合意をする→②離婚条件を話し合い,協議書を作成する→③離婚届を提出する」というものです。②の離婚条件には,親権者,養育費,財産分与,年金分割などが挙げられます。
お互いに離婚の合意ができれば離婚の理由は問題にはなりませんが,夫婦の一方だけが離婚をしたいと思っている場合は離婚の理由が重要になります。
離婚理由が必要になる場合とは?
調停離婚
一方は離婚したいと思っていても,他方が離婚を拒否している場合,当然ながら協議離婚は成立しません。この場合に離婚を進めるためには離婚調停を家庭裁判所に申し立てる必要があります。
調停を申し立てるには,離婚理由などを記載した申立書を裁判所に提出することになっておりますが,この手続の段階でも離婚理由は離婚裁判の段階に比べるとそこまで重要視されてはいません。なぜなら,調停という手続も,あくまで話し合いのための手続に過ぎないため,その点でいえば協議離婚とあまり変わらないからです。
協議離婚と違う利点を1つ挙げるなら,調停委員が間に入って当事者の言い分や気持ちを聞きながら話を進めてくれますので,直接話し合うよりも冷静に話し合うことができ,離婚の可能性が高まるということだろうと思われます。
裁判離婚
それでもなお,離婚を拒否する場合には,最終的には離婚裁判を起こす必要がありますが,この段階で最も離婚理由が重要視されることになります。離婚裁判では,裁判官が離婚の可否を判断することになるため,民法で定める離婚事由が認められない限り,離婚はできません。男女で一番多かった離婚理由である「性格が合わない」でいえば,民法で定める離婚事由でいうところの「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法第770条第1項5号)に該当すると裁判官が判断した場合に離婚が認められることになりますが,残念ながら一般的にはこれに該当しないと判断されることの方が多いです。そのため,いくら離婚したいと思っていても,離婚裁判の段階ではどんな理由でも離婚ができるわけではありません。
最後に
とはいえ,厚生労働省の「令和4年度離婚に関する統計の概況」の「令和2年の詳細分析」結果のうち「離婚の種類別にみた離婚」の構成割合は協議離婚が88.3%で多数を占めています。一方で調停離婚や裁判離婚は11.7%と少数派であるといえます。
ですので,離婚したくても離婚の理由が些細なものしかないからといって,絶対的に離婚できないとは限りません。交渉次第によっては離婚できる可能性は十分にありますので,離婚理由が些細なものであるからといって離婚を諦めるのではなく,まずはお近くの弁護士にご相談されてはいかがでしょうか。