医師の夫との離婚について
医師は,他業種と比較しても一般的に収入が多く,財産も多種に渡り,高額であることが少なくありません。また,場合によっては,勤務医ではなく,開業医や医療法人の出資者であることもあるでしょう。
妻側の視点から,夫が医師である場合の離婚についてポイントをご紹介します。
1 財産分与
⑴ 財産分与の対象について
財産分与の対象となるのは,夫婦が婚姻期間中に形成した財産です。夫名義の財産であっても,夫婦の協力によって取得されたものであれば実質的に共有財産として財産分与の対象となります。
医師の場合,収入が高く,保有する財産の種類が多く且つ高額である場合があります。まずは,同居中から,夫名義の財産として何があるかを把握しておきましょう。
① 不動産(土地,建物)
② 動産(家財,宝飾類,絵画,骨とう品など)
③ 自動車
④ 預貯金(銀行名・支店名)
⑤ 保険(生命保険,学資保険など)
⑥ 有価証券(株式,ゴルフ会員権など)
⑦ 退職金 …etc
また,夫が自ら医療法人を設立して出資している場合には,その医療法人への出資も分与の対象となり得ます。
⑵ 分与の割合について
夫婦が離婚する場合,夫婦の財産を2分の1の割合で分与するというのが基本的なルールです。
しかし,医師のように,特別な資格に基づく職業で且つ収入も高い場合には,夫婦の財産とはいえ,医師である夫の能力によって形成されたものと評価できる場合があります。この場合には,1/2ルールが適用されず,医師である夫に有利な財産分与の割合に修正されることがあります(医師である夫:妻=6:4の割合で分与を相当とした裁判例【大阪高判平成26年3月13日判タ1411号177頁】)。
2 婚姻費用・養育費について
婚姻費用・養育費がいくらになるかというのは,夫婦互いの収入額が重要な要素となります。収入が明らかになれば,子供の人数・年齢などをもとに,裁判所が公開している「算定表」で試算することができます。
しかし,医師のように収入が高額な場合(年収2000万円を超える場合)には,算定表が想定している年収を超えて,試算が困難となるケースがあります。
この場合,裁判実務でも考え方が分かれており,
① 算定表の最高額を上限とする考え方
② 税金等が増大することから,基礎収入割合を低く修正した上で算定する考え方
③ 同居中の生活レベル等の事情から算定する考え方
などがあります。
どの考え方が唯一正しいというわけではないことから,当事者のみでは話し合いがまとまらず,解決に至りづらいという面あります。
3 まとめ
一般に医師は,自身の才能や努力によって資格を取得し,社会的な地位も高いことからプライドが高い人が多いといわれています。そのため,当事者同士では離婚協議をスムーズに進めることが困難となることもあるでしょう。
また,上記で説明したとおり,医師との離婚では財産分与や婚姻費用・養育費について複雑となります。まずは,お気軽に弁護士にご相談ください。